春田 康吏 公式ブログ

知多半島(愛知県大府市)から気管切開してる人が発信しています

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この小説は、僕が大学生の頃から最近になって加筆修正したものです。
始めの方は力が入っていましたが、終わりになるにつれて筆力とやる気の無さを感じると思います。
話の内容は、こうして終わりというのは大学生の頃から決まっていて、それは決められたプロットに従って書きました。
でも、後半部分は本当に、やっつけ仕事みたいに書いていました。

どうしてかと言うと、物語自体が僕にとって、とてもつまらないものになってしまったからです。
これが一番大きかったです。
大学生の頃は、賞をとるくらいの勢いで書いていました。

書いていると別の物語の構想が思い浮かんできて、別でそっちを書いていると、そっちの方が魅力的にうつっちゃうんですよね。
進歩している。と思いたいのですが。

小説を書いていると、よく、これははるたさんの実体験に基づくものですか?とか、願望ですか?とか聞かれたりすることがあります。
聞くのは大いに結構なんですが、偉そうに聞こえるかもしれませんが、
何となく低レベルな質問だなと思うことはあります。

誰かが言った言葉、気に入った言葉、印象に残った言葉を小説で使おう。と思うことはありますが、
実体験だけで書いてもいないですし、願望だけで書いてもいません。

僕が、心がけていることは、
どんな物語でも、自分で読んだときに面白いか。好きか。
そこに尽きると思います。

今後も童話なり小説なりをちょいちょい発表していくとは思います。
興味の対象が執筆に大きく割かれていないので、それは忘れたころになります。

それから、3日後。
僕は、咲希に呼び出された。なにかが起こりそうだった。
春の風が吹き始めていた。
「いきなり、ごめんね」風で顔にまとわりつく髪をかきわけながら、咲希は言った。
「うん、何だった?」

「私、引越しするんだ。それで中退する。」
グラウンドに向かって、ゆっくり歩きながらそう言った。
最初に引越しを言い始めたのは、お父さんということだった。
家族全員反対したけど、最後は納得したらしい。
やはり、僕に再会したことが引き金になって出した結論が、家族全員すべてから離れて、新しい土地で一からスタートすることだった。
僕は、認めたくなかった。ましてや咲希と別れるなんて。

「私だって嫌。でも……また落ち着いたら連絡するから」
終わっていない。まだ終わっていない。
微かな一筋の淡い光のようだったけど、それだけが唯一の希望だった。
「だから、それまで待ってて」気がついたら、僕たちはグラウンドの真ん中まできていた。
後ろを振り返ると、歩いた跡が地面についていた。

僕の平行に並んだ車輪の跡と、咲希の小さくてかわいらしい靴の跡だった。
それは、長くくっきりとついていて、まるで僕たちが今まで歩んできた足跡のようだった。

朝帰りは初めてだった。しんと静まりかえった早朝の廊下も初めてだった。
いつもとは違う角度で、日の出したばかりの太陽の光が差し込んでいた。
朝飯まで、まだ時間があったのでベッドに横になることにした。
カーテンを閉めていない窓から陽が差し込んでいた。
鳥のさえずりも窓を閉めているのに聞こえてきた。

特に、いつもと変わらない朝だった。
怒られることもなく、これと言って不機嫌な様子もなく、淡々と朝げは済んでいった。
多少のもどかしさを感じたが、特に何も言い出すこともせず、いつものように大学に向かった。
それから咲希とは、クリスマスも過ごしたし、初詣にも行った。
周りからは何も言われなかったし、言わせなかった。
すべてが満ち足りていた。
気がついたら、季節はいつの間にか年を越して冬が終わりかけていた。
無事、留年もせず上がれそうだということが分かり、
意気揚々と彼女に伝えた。自分のことのように喜んでくれるところを想像しながら。
でも僕は、彼女の反応を見てがっかりした。
「そうなんだ」たった、その一言だけだった。
心ここにあらずといった様子だった。

彼女いわく、お父さんは最近、落ち着きがなくフラフラ出歩いて一晩帰ってこないのは、しょっちゅうらしい。
おまけに、お母さんはこんなときだというのに友達と旅行だと言う。
「お母さんもお母さんなら、友達も友達だわ」と咲希は言った。
そういうことで、僕は彼女の家に上がり込んでしまった。
思えば、ここに来たのは、2回目だった。
車いすからソファーに移ると、彼女は隣に座った。
「ふふ、良ちゃんと同じ場所に座ってる」
「え?」
「だって、いつもは良ちゃん、車いすだから。一緒にベンチにだって座ることないし、歩いてるときだって、手もつなげないでしょ」
そう言うと、彼女は僕の手を握った。
すごく温かくて、きれいで落ち着ける手だった。それをもっと感じたくて、僕はぎゅっと握り返した。
それから、僕たちはミックスピーナッツを食べながら、スカパーでサッカー観戦をした。
これだけサッカー好きのカップルというのも珍しいだろう。
どちらのチームのファンというわけでもないのだけど、ゴールが決まったときは拍手をして、すごいプレーが出たときは感嘆の声を上げた。
試合が終わる頃には、0時を回っていた。さっきまで白熱の試合を映していたそのテレビは、ソファーに座っている僕らを映していた。
彼女は黙っていた。そして一言、「良ちゃん……」と言った。
僕は、左を向いて咲希の顔を見た。
その横顔は、すぐ近くにあった。
僕は思わず、そのほおに口づけした。
それから僕は、いや僕たちは、そのままお互いの体を重ね合わせていった。

丸いスタジアムの屋根が見えると、急に彼女が口を開いた。
「私、いつになったら良ちゃんのお母さんに認めてもらえるのかな」独り言のようにも聞こえたし、僕にたずねているようにも聞こえた。
でも、どちらにしたって僕は、この言葉に対して何も返せなかった。
右を見ると、咲希の横顔があって、真っ直ぐ前を見すえるその大きな瞳は、かすかにうるんでいるようだった。
それを見た僕は、思わず「ごめん」と言ってしまった。
「ううん、こっちこそ久しぶりのデートだって言うのに暗い話して」
「そうだね、楽しく行こ」

いつもは、ヨーロッパサッカー中心だったけど、Jリーグ観戦もそれはそれで面白かった。
ちょうど点の取り合いという、分かりやすい攻撃的なゲームだったからかもしれない。
二人とも満足した。

帰る途中、彼女の家に寄っていくことにした。
それは、まずい。と僕は言ったが、今日はいいの。と彼女は言った。

サッカーを観に行こうよと彼女が言ったのは、夏休みが終わって後期が始まったばかりの頃だった。
フットサルから遠ざかってからサッカーの話をしてなかったし、
まさか一緒に観に行くなんて考えたこともなかった。
思わず、「えっ?マジ?」と言ってしまった。
「だって、私と良ちゃん、サッカー好きじゃん」
「まあ、そうだけど、まさか咲希と行くなんて思ってもみなかったから」
「へへっ、実はチケット二枚あるんだ」
「どうしたの」
「うーん、お父さんからもらった」
「そっか。親父さんがくれたのか」僕がしみじみした顔で言うと、彼女は少し気遣ってか小さな声で、
「うん、二人で行ってきなさいって」と言った。

当日は、咲希が家まで迎えに来てくれて、
彼女が運転する車の助手席で僕はドキドキしていた。
門の前に止まった彼女の車を僕は初めて見た。
かわいらしい、おもちゃ屋で買ったような軽自動車で、色は真っ青だった。
いかにも咲希らしい車だと思った。
僕が先に乗って、車いすは折り畳んで後ろに乗せた。
出発するとき、彼女は玄関の方をちらっと見て誰もいないことを確認すると、アクセルを踏んだ。
「最近、お母さんどう?」
「相変わらずかな」
「そっか」相変わらずとしか言えなかった。咲希のことを話そうとすると怒り出すか、話をそらすかのどちらかだったから。

若いころの恋愛というのは、くっついたり離れたり、周りでも復縁だの元カノだのなんだの、そういう話は、よく聞いていた。
でも、自分がその当事者になるとは思ってもみなかった。
僕は、咲希とまた付き合うことにした。
最後の「好き」という言葉が、僕の心をどんどん溶かしていったのは確かだった。
家に着いた時には、完全にドロドロに溶けていた。
そして、その溶けたドロドロの心は、次第に僕も「好き」という形に固まっていった。
そんなに簡単に嫌いになんてなれなかった。

でもここからが、大変なときを迎えるのだ。
だって、被害者と加害者の娘が付き合うのだから。

どういうわけか瞬く間に、親にはバレた。
何かとてもまずいものを食べたときのように、
すごい痛みを味わったときのように、嫌な顔をされた。
そして、それは信じられないという顔に変わっていった。
思いっきり、怒られた。
それは、怒られたという言葉では表現できない以上のものだった。
理性では分かっている。
だけど、どうすることもできなかった。

ノートを取り出して、メモを取り始めたとき、
ふと顔をあげると、そこにはサークルを止めたはずの咲希がいた。
会わせるための孝と咲希の策略だった。
話さなきゃいけないらしい。

「何で、連絡くれないの?」
「だって……もう終わったじゃん」
「終わってないよ。何がいけないの。何が駄目なの。どうして加害者の娘と被害者が付き合っちゃいけないの」
ドラマのようなセリフだな。と僕は思った。
でもそれは、フィクションではなくノンフィクションだった。
実在の人物と団体の話だった。
孝は、ばつの悪そうな顔をしたかと思うと、どこかに行ってしまった。
他のメンバーも空気を察知したのか、二人以外は誰もいなくなった。
僕は、加害者だとか被害者の観点から話すとややこしくなるので、勝手にどんどん話を変えていった。

「どうせ、俺のことなんて好きじゃないんだろ、そりゃそうだよな。こんな手のかかる男、他にいないもんな」
「違うよ」
「何が違うんだよ。他の男と全然違うのは誰が見ても分かるじゃないか」
「だけど、私は……」
「私は、何だって言うんだよ。どうせ最初から興味本位で近づいてきたんだろ。それがこんなに世話がかかることが分かって嫌になったんだろ」僕は、一気にまくしたてた。
「良ちゃん、言ってること全然違うよ。めちゃくちゃだよ」
彼女の目にうっすらと涙が見えた。
それでも僕は、一気にまくしたてた。
言いたいことをすべて言い終えると、そこには沈黙があるだけだった。彼女は何も言わなかった。
ただ、うつむいていた。
じっとうつむいて地面にある何かを見つめている。
そんな感じだった。
しかし僕は、そんな彼女が、そんな何も言い返してこない彼女が、すごく嫌だった。
「何で何も言わないんだよ」そのときだった。バシッ
ほおにチクッとした痛みが走った。
そして、ジワーッと熱くなるのを感じた。
そのあとで、ヒリヒリとした痛みを感じた。
「好きだから。私は、どうしても良ちゃんのことが好きだから」咲希は、そう言った。

大学は、休んだ。
家族もただならぬ様子に気がついたようだったが、体の調子が悪いとだけ言った。
事故の物理的、精神的ショックから立ち直り始め、少しだけ明るくなり始めていた景色が、
また、もとの色の無い灰色の世界に戻ったような気がした。

咲希とは、それから一週間会わなかった。連絡もしなかった。
もうこのまま関係を自然消滅させようと思った。
孝や他の友人たちとは付き合えるようになったけど、理由(わけ)はあえて言わなかったし、気を使ってるのか聞かれもしなかった。
咲希とはニアミスもあったが、できるだけ会わないように努力していた。
まあもともと、こんな車イスになったら彼女なんてできるはずないから、
いい夢でも見させてもらった。そう思うことにした。
夏が終わろうとしていた。
夏休みは、無駄に過ごした。マンガ読んだり、テレビ見たり、ネットしたり……
こんなに無駄に過ごした夏というのも初めてかもしれない。
後期が始まると、僕は勉強にいそしんだ。今は、「スポーツ科学」
スポーツはできないけど、これを発展・応用させて「障害者スポーツ」の研究をしたいと密かに思っていた。
この密かな思いは、孝にだけは打ち明けていた。

「お前さ、スポ科、やってんだろ。だったらさ、うちのフットサル研究しに来いよ」
学食のコロッケをもぐつかせながら、気軽に提案してきた。
「だってさ……」
「咲希ちゃんだろ。そりゃ、分かる。咲希ちゃんな、辞めちゃったんだよ」
(えっ、辞めた?)僕の心の中に、ざわめきが走った。
そういうことなら咲希に会わずに済む。
単純だが、僕は、行くことにした。

玄関を出てから、咲希だけが出てきた。
他は、試合が気になるようだ。
急変した友達は気になるものの、背に腹は代えられないといったところか。
「どうしたの?なんで?なんで帰っちゃうの?」明らかに動揺していた。矢継ぎ早に質問してくる。
「ちょっと用事、思い出しちゃって」僕は、できるだけ明るく言った。
しかし、言葉の端々に出てくる不安な気持ちは相手に伝わるようだった。
「意味、分かんないけど」
咲希が話している間も、僕は車イスをこいだ。
結局、一つ目の曲がり角を曲がったらついてこなくなった。
それから家に帰ってベッドに寝転がるまでを覚えていない。

頭の中は、ぐるぐる回って、身体の末端から血の気が引いていった。

眠れないかと思いきや、衝撃的なストレスを受けたためか、深く眠れた。
朝、それで疲れが取れれば良いが、一層身体は重くなっていた。
携帯を見ると、マナーモードにしていた画面に着信履歴が5件残っていた。
咲希3件、孝2件。
留守番電話には、咲希の声が録音されていた。
「お父さんから全部聞きました。電話下さい」いつもとは違う、とても冷静で落ち着いた声だった。
咲希のことは、もちろん嫌いじゃない。
でも、付き合っちゃいけない。
人として付き合っちゃいけない関係なんだ。
僕は、そう思った。

同じ内容のメールも入っていたが、無視した。今までの関連する出来事が、脳裏にフラッシュバックした。
事故にあった瞬間、集中治療室に入っていたとき、当時は知らなかった咲希の父親が病室で謝る姿、そして、夜景の見えるところでキスしたこと。

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